静岡県で「里山の暮らし」を営む庄子妙絵さん。ご主人「たっちゃん」やご近所さんたちとの日々の出来事をときどきコラムに綴ってくれています。今回は、思い出の古い絵本について。
ある時たっちゃんの探し物の手伝いをしていた。どこに入れったけな〜?とさりげなく本が入っている箱を開けた。すると、前に実家から持ってきた年季の入った2冊の本が目に入った。
「きん色の窓とピーター」
「ロンドン橋でひろった夢」
それは、小さい時に母によく読んでもらった本だった。
暮しの手帖社が出版したこの本には、世界中のおはなしが15話ずつほどあり、絵は影絵作家の藤城清治さんが手がけている。
ついつい探し物そっちのけで、この本を開いた。
当時の記憶がよみがえる。当時、ろくに字が読めないのに、引き込まれるように絵を見ていた。影絵の黒に鮮やかな配色が綺麗で何度も開いてはパラパラと絵だけを見ていた。思い出と同時に、全てのお話を読んでもらったわけではなく、実際知らないお話の方が多いことにも気づいた。
改めて私は、「ちゃんとこの本を読んでみたい。」と思い、読み始めた。
うごかなかった柳の木
、、、はじめの日、やっとなん分の一かを切って、その日は暮れました。ところが翌朝、柳の木のところへ行った人夫たちは、あっとおどろきました。きのう切った切り口が、すっかりふさがって、幹はもとどおりになっているのです。
ー日本の昔話よりー
チューリップのゆりかご
ある夜、一人の妖精が、むずがる赤ちゃんを抱いて空を飛んでいるとき、ふとおばあさんのチューリップの花だんを見つけました。美しく咲いているチューリップの花は、ちょうどかわいいゆりかごのように思えたのです。
ーイングランドの民話ー
レチカとお月さま
「ほらごらん。月がおりてくる。」みると、まんまるい月が三頭のトナカイにソリを引かせて、まっしぐらに降りてくるではありませんか。
「こっちに向かってくるわ。なぜかしら」
「あなたがあんまりかわいいから、さらいにきたんだよ」レチカはびっくりしました。
ーシベリアの昔話よりー
うぐいす姫
「なんとふしぎなたんすだろう」吾作は、二番目の引き出しをあけました。そこには小さな畑があって、大勢のこびとたちが、せっせと働いていました。くわで耕すものもいれば、水桶をかつぐものや、かごに野菜を入れてはこぶものもいました。
ー日本の昔話よりー
ストーリーはすすみ、私は美しい影絵のおはなしの世界へ誘われていく。
柳の木の精のはかない恋物語。。。
不思議なたんすの引き出しを開けると、せっせとカブの収穫をしているこびとたちの可愛らしいこと。。。❤︎
レチカの住む所には七色のオーロラが見えるんだね〜〜キレイだね〜。。。
藤城さんの影絵で描かれた日本、北欧やギリシャ、インド、中国、ヨーロッパと世界中の物語の旅をしたような気分。
再びこの本にめぐり逢い、さらに深く知れたことも嬉しく、母に、この本を改めて開いて読んだことを伝えた。
母は、
「その本、懐かしいね〜。そこにある藤城さんのお話は、「暮しの手帖」に昔、載っていたのよ。あなたのおばあちゃんは「暮しの手帖」が好きで、家にあったことをよく覚えてる。」
と母にとっても藤城さんの影絵はとても懐かしいそう。
最近本の整理をしていて、自分が子供の頃読んだ絵本や童話を改めて読み返すことがある。今だからこそ響いてくるメッセージやその絵本の美しさに改めて感動する。絵本や童話を作った作者がどのような想いでこれらの本を作ったのだろうと調べたりもする。作品が生まれた当時の時代背景や世の中の風潮などが分かると、より作り手のメッセージが強く心に伝わる。
たっちゃんに本棚を作って欲しいとお願いをした。まだダンボールに入った実家から持ってきた本がある。ちゃんと本を整理して保管したい。そして、たまに読みたいと思う時に手に取れる距離に置いておきたい。
妙絵さんが心にも体にも優しい「里山の暮らし」に辿り着いた経緯についてインタビューした記事はこちらです。よかったらご覧ください。⇨「東京&アメリカ生活を経て、里山の暮らしへ」
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