静岡県で「里山の暮らし」を営む庄子妙絵さん。ご主人「たっちゃん」やご近所さんたちとの日々の出来事をときどきコラムに綴ってくれています。今回は季節にちなんだ古民家の衣替えのお話です。
季節が暖かくなり始めると、世間と同じように我が家も衣替え、夏の備えを始める。扇風機を出し、服も夏ものへと取り換える。たっちゃんのお弁当も冬仕様の保温ジャーから夏仕様の保冷バッグとメンパに変える。
ごはん用の器は、昨年秋中山道で出会った美しい木曽メンパ。
古民家に住む我が家は、暑くなる前に天井板の一部を外し家も衣替え。
たたみ2畳分くらいの入り口付近の板を外すと、それまでこもっていた温かい空気が一気に上がって行く。これをするとしないとでは、部屋の温度はまるで違う。がらんと空間が広くなり、こもっていた空気が一気に通って行く。そして肌寒くなってくる11月頃には、ココを閉じる。そうすることで今度は空間を温かく保つ事ができる。
寝床を夏仕様にする上で欠かせないのは「蚊帳・カヤ」。押入れから蚊帳を引っ張り出し、天日で干してから、蚊帳をつる。外で蚊が飛び出すとともに、どこからともなく入ってくる蚊は早くも私たちの安眠の邪魔をする。麻の蚊帳はこの家とともに受け継いだ年季の入ったもの。麻で出来ているので風通しも最高に良い。蚊帳の中で眠る安心感は、子供の頃カーテン基地で姉とこもって遊んでいた、あの「守られている感」を思い出す。この蚊帳のおかげで心地良い風を感じながら、快適に眠る事ができとても重宝している。
季節は進み、蒸し暑い日がいよいよ増えてくると、窓だらけの古民家の窓をいっせいに開ける。陽の光が入ると共に、のれんがひらひら〜とするほど風がよく通る。湿度の高い日は、ハリや柱、土壁、たたみ、しょうじと家全体が呼吸をしているように湿気を吸っているみたい。
土壁、たたみ、ふすま、梁・ハリと自然素材だけで出来ている古民家は、日本の風土をよく理解した昔の日本人によって、とてもよく考えられ、作られていると感じる。都会で育った私は、欧米からきたツーバイフォーの家の暮らし方しか知らなかった。便利な都会暮らしではあったけれど、都会時代はアトピー持ち、冷え性、偏頭痛などにも悩んでいた。その暮らし方から離れ、今は里山の古民家で暮らしている。何が良かったのかは分からないが、アトピーは治り、偏頭痛も大分良くなった。この暮らし方が私自身を丈夫にしてくれていることは間違いない。
昔ながらの日本人の暮らし方には、今だから感じることができる「エコな暮らし方」や「モノを無駄にしない知恵や工夫」がぎっしりと詰まっていることを暮らしながら改めて学ばせてもらっているようである。
※妙絵さんの「里山の暮らし」コラムがよかったなと思われた方は、右下のハートマークをクリックしていただけると嬉しいです。
Comments