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思考の歪み



日常の中で起きるさまざまな出来事。どう捉えるかは、人それぞれに異なっています。コップ半分に入った水を「こんなに入っている」と思う人と「これしか入っていない」と思う人がいるように、同じことを体験しても人によって捉え方が違うのは興味深いことです。


鬱やネガティブ思考に陥りやすい人たちに効果的だといわれる心理療法のひとつにCBT(認知行動療法)がありますが、CBTの基本のツールとなっている”Cognitive Distortion”(認知の歪み)は、私たちの陥りやすい思考パターンを理解するのにとても役立つツールです。



鬱やネガティブ思考に陥りやすい人だけでなく、誰でも意識することで自分の考え方の癖、とくに自分にとって好ましくないことが起きたときに陥りやすくなる思考パターンを知ることができます。



1)“Filtering”(フィルタリング思考)


ポジティブなことよりもネガティブなことにフォーカスしてしまう思考の歪み。たとえば、起きていることのほとんどがポジティブであるにもかかわらず、ほんの小さなネガティブなことにばかり意識が行き、それ以外のことを自動的にフィルタリングして、ネガティブな部分だけを意識して捉える思考の歪み。


2)“Polarized Thinking/Black & White Thinking” (二極化思考・白か黒か思考)


「あり」か「なし」か、「良い」か「悪い」か、などの二極で判断する歪み。そこには二極以外の判断基準、つまりグレーゾーンが存在しない。たとえば、完璧にできたことのみを認めて、それ以外は価値がないと考えたり、一位でなければ意味がない、または「勝ち」か「負け」かなどで判断する。


3)”Overgeneralization” (過剰一般化思考)


一つ、または二つほどの出来事をもとに、きっとそうに違いないと考える歪み。たとえば、就活の面接で2社落ちたことで、自分はきっと就職できないのだと思い込む。また、誰かひとりに「タイプじゃない」と言われたことで、自分には魅力がないのだと思い込む。


4)“Jumping to Conclusion” (結論思考)


十分な証拠なしで結論を出そうとする歪み。3)の「過剰一般化思考」では何かの体験や出来事によって判断するが、この「結論思考」ではそういった出来事(証拠)なしでも、とにかく結論を出そうする。例えば、明らかな証拠もなく、自分はあの人に嫌われているはずだと決めつけて悲観的になったり、取り組む前からこのプロジェクトはきっとうまくいくはずがないと考えたりなどして、証拠なしで結論を出そうとする。


5)“Catastrophizing/Magnifying or Minimizing (破局的思考・過剰に大袈裟または過小化する思考)


一つの小さな出来事をきっかけに、悲惨な大惨事が起きると考えてしまう歪み。たとえば、上司に小さな注意を受けたことで、プロジェクトから外されるに違いない、クビになるかもしれないと決めつけたり、小さな注意をされただけなのに自分には能力がないからこの仕事は向いていないと決めつけてしまう。逆に、褒められたことは極端に過小評価してしまう。


6)“Personalization” (パーソナライゼーション)


自分がする全てのことが、自分の周囲に影響を与えると考え、不合理なこじつけのようなものであってもそうだと信じてしまう歪み。たとえば、自分が助けてあげたからあの人の人生はうまく行っているのだと考えたり、または友人が精神的に落ち込んでいることについて、自分がもっと頑張って励ましていればそうならなかったはずだ、と考える。


7)“Control Fallacies” (誤ったコントール思考)

この歪みには、「全ては自分でコントロールできる」と考える思考と、逆に「自分は何もコントロールできない」と考える2種類の歪みに分かれる。


一つ目は、起きること全ては自分でコントロールしているのだという歪み。たとえば、その人の幸せや辛さの全ては本人に責任があると考え、何かがうまくいっていないのはその人自身の責任だと考える。自分に対してもうまくいかないことがあると責める傾向がある。


二つ目は、起きることの全ては外的要因と運命によって決まっているので、自分にはコントロールすることができないと考える歪み。たとえば、試験をパスできなかったのは、隣の人の落ち着きがなかったから集中できなかったせいで、それを誰も注意しなかったからで、自分にはコントロール不可能な状況だったのだから仕方がなかった、運がなかった、と考える。



8)”Fallacy of Fairness” (誤った平等主義思考)


平等主義をあるとあらゆることに持ち込む歪み。平等であることは重要だけれど、それを人生の全てに持ち込んで考え、逆に偏った思考になっている。


9)“Blaming” (誰かのせい思考)


うまくいかなかったことを他人のせいにする。この歪みが働くと、自分の状態すらも他人のせいにする。自分の状態や在り方は他人が作るのではなく自分自身で決めることができるのだと認めることができない。


10)”Should”(~すべき思考)


暗黙のルールや常識に縛られて、それを守れない他人や自分自身を責めたり罪悪感を感じたり恥いったりする歪み。たとえば、接客業の人に無礼な態度を取られて「もっと丁寧に接客すべきだ」と苛立つ一方で、別の場面では気を利かせるべき状況で機転が効かなかった自分自身を「ああすべきだったのに・・・」と恥じたり責めたりする。


11)“Emotional Reasoning” (感情論思考)


物事を自分の感情に基づいて、「私がそう感じるから真実なのだ」と考える歪み。たとえば、旅行に出かけるのが不安になった。不安になったということは何か悪いことが起きるに違いない、と考える。感じたことが真実なのだと、自分の感情ベースで真実を組み立てる。


12)”Fallacy of Change” (ファラシーオブチェンジ:変化を誤った形で求める思考)


自分の都合に応じて他人が変化すべきだと考える歪み。たとえば、パートナーが行動や在り方を変えれさえすれば自分が幸せになれるはず、と考える。自分の幸せは相手にかかっていると考え、相手に変わることを求める。


13)“Global Labeling/Mislabeling (グローバルラベリング・ミスラベリング:極論思考)


他人や世の中の出来事に対して、一つまたは二つ程度の出来事などをもとに全てがそうであると決めつけてしまう行き過ぎた極論思考による歪み。たとえば、一度話しかけて無視された(ように感じた)ことで、その人が誰に対しても無礼でマナーの欠けた人間だと決めつける。運転中に横入りしてきた失礼なドライバーを最低人間だと決めるける、など。


14)“Always being right” (自分はいつも正しい思考)


自分は常に正しいと考える歪み。自分の間違いを過小し、正しかったことのみを過大評価する。他人の気持ちを汲み取るよりも、自分が正しいかったかどうかにこだわる。


15)“Heavens Reward Fallacy” (天国での報酬思考)


自分が頑張ったことには必ずその褒美が与えられるべきだと考える歪み。たとえば、自分は頑張ったから昇格するはずだと期待する。しかし、自分ではなく別の人が昇格したことで怒りを感じる。昇格を決める理由は多面的であるのにもかかわらず、とにかく自分の頑張りが報われなかったことがフェアじゃないと考えて不満になる。


ちなみに、天国での報酬とは、キリスト教に基づいて、いいことをしたから人生が終わった後には天国で神に褒められると考えるところからきている。




以上、認知療法行動で取り上げられる「歪み」について簡単に書いてみました。落ち込んでいるときやプチ鬱のときにこういった自分の思考パターンを捉えて、「本当にそうなのか?」について自分自身に解いてみたり、別の角度から物事を見れるように習慣づけていくことがブレイクスルーのきっかけになります。ご参考ください。

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