top of page

親切の循環 

「Pay it foward」の精神について考えてみました。

 

先日の運転中、思いがけない場面で優しいドライバーさんに道を譲ってもらい、心がほんわかする瞬間がありました。


アメリカの大都市を運転されたことがある方はご存知かと思いますが、こちらのドライバーのマナーは日本人である自分には驚くことばかり。私の住むサンフランシスコも例外なく、マナーの悪いドライバーたちでいっぱいです。とくに昨今はUber やLyftドライバー(現代版タクシーのようなサービスです)が市内に溢れており、街の道路はひどい混みようです。


そして誰もが「我が先に」と競い合うように走るラッシュアワーの街中の車道。思いがけず譲り合いの精神に出会うと、大げさでもなく、何か小さな抽選に当たったかのような嬉しい気持ちになるのです。そしてもちろん、親切を受けた自分はその厚意を次へと転送するべく、自分が譲れる機会を見つけて親切を繋いでゆきます。


英語に「Pay it foward」という言葉がありますが、これは受けた親切を次の相手につないでいく行為を意味します。ときおり、「せっかく道を譲ってあげたのに、あのドライバーはこちらに会釈もしなかった。」なんて、こちらの好意に対してお礼がなかったことに腹をたてる場面がありますが、Pay it fowardでは「お礼」は自分が本当に必要なときに、最も役立つ形で自分に戻ってくると考えます。


また、Pay it fowardは直訳すると「先に支払う」という意味。つまり、親切をしてあげた相手から直接お礼を求めるのではなく、いつか自分に必要なときに必要な助けがやってくるように先に支払っておくという意味があるのです。今日の自分がした好意が未来の自分の心をほんわかさせるかもしれないなんて、未来の自分の幸せを願う、ちょっとした願掛けのよう。神秘的かつ合理的な考え方だと思いませんか?



心に残っている親切体験


Pay it fowardは、意識してみると生活のいろんな場面で役立つウィズダムです。人生の節々でPay it foward的なありがたい行為を受けた経験を振り返り、その中の一つで心に残っているストーリーをシェアさせてください。


メキシコのサンミグエル・デ・アレンデを訪れていた時のこと。現地で親しくしている友人の一人から、グアテマラでマヤ暦リーディングを勉強した先生がいるのけど、興味があれば紹介するよと言われました。友人曰く、「なんとなくあなたに紹介した方がいい気がするの。」とのこと。直観力の高い彼女がそういうならきっと意味があるはずと思い、限られた滞在期間でしたが、友人を通してアポイントメントをとってもらいました。


オフィス兼自宅だという先生の住所をいただき、たどり着いたのは街中にある邸宅。敷地は壁に囲まれていて、外からは中の様子が全く見えない状態です。門を開けてもらいドキドキしながら進んでゆくと、そこには、”トロピカルな秘密の花園”と名ずけたくなるような、驚くほど美しい庭が広がっていました。広い敷地の中にはメキシコならではの色とりどりの鮮やかな花や果樹が植えられています。野鳥なのか餌付けしているのか、現地ならではのカラフルな鳥たちが自由に飛び回り、そしてたくさんのハチドリたちも花の蜜を吸いに来ているその様子はまさにサンクチュアリ。庭のいたるところにベンチや揺り椅子が置いてあり、住人や訪ねてくるゲストたちがこの庭での時間を楽しむためのものなのだと想像できます。


感動している私が通されたのは、住居と思われるメインの建屋に隣接している大きなテラスルーム。コートヤード(中庭)に面しているそのテラス空間は、心地よいソファとダイニングセットが置いてあり、どうやらアウトドアのリビングルームのようです。チョロチョロと流れる心地よい水の音が聞こえてくるその先には、現地のアーティストが作ったというカラフルなメキシカンタイルでデザインされた美しい噴水があります。中庭の中央にはメキシコの桜と呼ばれるハカランダの木が生えていて、紫色の美しい花が満開でした。「ここで書き物とかしたら気持ちいいだろうな・・・。」そんなことをぼんやりと考えていると、キッチンからフルーツウォーターを持って出て来た先生が、もっと実用的なオフィスが家の中にあるのだけど、結局いつもここで作業をしてしまうのだとのこと。納得です。とても素敵なのに、嫌味のないナチュラルで心地よい空間。


そんな心地よい空間でやっていただいたリーディングセッション。あらかじめ友人から話は聞いていたのですが、この先生は大げさでなくかなりの凄腕。自分は今日この場所に来て、この空間でこの先生から聞くべきことがあったのだということがはっきりと分かる、とても意味深い体験をしました。


そして、たっぷり3時間のセッションが終了し、いただいた膨大な情報量に圧倒されつつ感動して胸がいっぱいになっている私がセッション代金のお支払いについてたずねると、あっさりと「お代はいりませんよ。」とのこと。「あなたのようはセラピーやヒーリング業に携わる同業者には『Pay it foward』することにしているのです。」とおっしゃり、さらには、「明日、もし時間があればまた戻って来なさい。今夜ゆっくりと頭の中を整理したらまた質問があるでしょうから、フォローアップをしましょう。」とのこと。お言葉に甘えて、翌日、私はあらかじめ予定していた用事をキャンセルしてもう一度この先生のお宅に伺い、リーディングの続きとおしゃべりの時間を過ごさせてもらったのでした。別れ際にはもう一度、「Pay it fowardですよ!」と笑顔でおっしゃられ、私は必ずそうしますと約束してお別れしました。旅人である私に割いてくださった貴重な時間。その時にいただいたメッセージや一緒に過ごさせていただいた時間は、その後の自分のインスピレーションや目標となり現在に役立っています。


「タダより怖いものはない」なんて言葉がありますが、そんなこと感じさせなかった、私にとってこの体験は忘れられないことの一つです。Pay it fowardの法則は不思議な形で人生を導いてくれるような気がします。


親切には、その大きさに関係なく、厚意を受けた人の心をほっこりとさせてくれるマジカルなパワーがあると思います。でも、忙しい日常の中では余裕が持てないことも多く、誰かに小さな親切をもらったことさえ気がつかないでいることもあるかもしれません。または、当たり前のように受け取ってさらりと流してしまっていることだってあるのかも。


たとえ忙しくてもどんな状況でも、親切を循環させていける大人でありたい。そんなことを思い出させてくれた、ある日のラッシュアワーでした。


#心コラム #心を癒す

Comments


bottom of page