2021年2月20日

足りないを考えない 

最終更新: 2021年12月13日

「足りない」ことについて、1日の中でどれくらい考えていると思いますか?


 

ある日、そんなことをふと思い、自分のことを観察をしてみることにしました。朝起きた瞬間から就寝するまでの1日の中で、自分はどれくらい「足りないモノやことがら」について考えているのか、そしてその思考が自分にどんな影響を与えているのか。


 

とりあえず3日間、「足りないモノやことがら」について考えた瞬間をメモしておくことにしました。


 
メモの内容は、たとえば物質的なことだと、パントリーの中のパスタがもうすぐなくなるから(足りなくなるかもしれないから)買いに行かねば、などということから、衣類や家庭用品、趣味の道具などに渡っていろんなものたちについてです。「足りない」という感覚は、あるべきものがなくなる(食料品や家庭用品など)というモノあれば、持っているけど新しいものに買い替えたいとか、またはとりあえず間に合っているけど、足りなくなるといけないから買い足そうという「足りない」もあります。


 

物質的なこと以外の「足りない」だと、たとえば時間が足りない、ということから、睡眠が足りない、運動が足りない、アイディアが足りない、技術が足りない、才能が足りない、実行力が足りない・・・・などなど、観察してみると、本当にいろんなことを足りないと考えているものです。思い立って「足りなさをどうにかしなければ」と、なんらかの行動に移すこともあれば、慢性的に感じている「足りない」に関して、ただそのことを一瞬考えては消えていくという、思考のクセを見つけることもありました。


 

今回は3日間だけ、自分のことを観察実験してみましたが、もし観察期間をもっと長くしたら、きっとさらにいろんなことを足りないと感じている自分を発見することでしょう。こんな足りないだらけの人を信用していいのかと思われてしまいそうですが(笑)でも、自分の中に根深くインプットされている「足りない・不十分だ」という観念に気づかされると、改めて見えてくることがあります。


 


 

足りない思考の根源


 

この「足りない思考」は、本来は動物であり、サバイバルすることが大切だった人間にインプットされてきた本能でもあります。生き残るためにストックが必要だし、快適に過ごすために補充する能力が磨かれてきたのです。

しかし、ソウル・オブ・マネーの著書、リン・ツイストは、人間の足りない思考・観念を「欠乏の間違った神話」として、現在の地球が抱えている大きな課題、飢餓や気候変動、経済格差などの原因だと語っています。足りない思考がいかに私たちの心のあり方、資源、経済、暮らし方などを貧しくしているかについて掘り下げてみると、いろんなことが見えてきます。リン・ツイストの唱える欠乏の間違った神話は、下記の通りです。


 

欠乏の間違った神話その1:There Is Not Enough (充分に無い)


 

すべての人に資源や必要なものが必要なだけ行き渡り、誰にとっても十分なレベルで満たされるということはありえないという観念。世の中には恵まれた人とそうでない人がいる。他者を犠牲にしてでも自分のために気を配ることがより良い人生のために必要であるという観念。


 


 

欠乏の間違った神話その2:More is Better(多ければ多い方がいい)


 

物やお金、その他なんでもより多く持っていることが素晴らしいという考え。「充分にない」観念がベースにあるため、できるだけ持っていた方が安心だし、より良い暮らしになるという思考。今日の競争社会を作り上げている観念であり、所有物に限らず、自分自身に対しても「自分が充分である」と感じることができない考え方。次から次へと新たな目標を追いかける思考になり、満たされる状態をたとえ感じたとしてもそれは短い期間であり、そこに留まって感謝して味わうのではなく、再び新たに手に入れたい状態を見つけてはそれを半永久的に追いかけてしまう生き方。


 


 

欠乏の間違った神話その3:That's Just the Way It Is (それはそうと決まっている)

上記の状態に解決策はないので、それを受け入れて諦める観念。すべての人が満たされる状態は起きないし、恵まれた人とそうでない人がいるのは当たり前。充分だと感じる状態は続かないし、々がいつも何か足りないと感じている状態だからこそ、経済が回っている。世の中には勝者とそうでない人がいて、成功者とそうでない人がいて、そういう仕組みでできているのだから仕方ないという考え。


 


 

どうでしょう。上記の中で、自分の持っている観念に、少しでも当てはまるものがありますか?


 


 

足りない思考をやめてみる


 

この件について、親しくしているセラピスト仲間に相談して、自分の足りない思考を見つけてどうやってトランスフォームさせるかについて実験し、その過程をシェアし合うグループを作りました。普段はドリームワークという、夢(眠っている時にみる)を分析・活用して行うセラピーを研究しているこのグループの仲間たちは、目覚めている世界と眠っている時の夢の世界(潜在意識)の両方に渡って、思考や観念や直感からのメッセージを見つけて、それを実生活に活かしてゆくエキスパートたちです。皆で「足りない思考」が私たちに与えている影響に着目しながら、それをどんな風にトランスフォームさせていくことができるかを話し合っていつつ、自分の変化についてもシェアし合っています。


 

個人的に、現在取り組んでみているのは、足りない思考をトランスフォームさせるために、自分が「足りない・十分じゃない」と感じそうになる瞬間を捉えて、それに気がついた瞬間に、違う思考に入れ替えるようにすることです。

食品や生活用品などの必要性の高いものに関してはもちろん普通に買い足すわけですが、それ以外の必要性が中くらいまたは低いものに関しては、コップの水の表現(コップ半分の水を、まだこんなに入っていると捉えるか、それとも半分しか入っていないと捉えるか)と同じように、「足ることを知る」思考で考えるようにしてみます。

そして、それ以上に重要だと感じる、自分自身に対する足りない・不十分だという思考については、それが考えが浮かんできたらとりあえず一旦脇に置いて起きます。そして、これまでの自分が積み上げてきた経験や知識に思いを巡らせて、現在の自分がそのままで十分である理由を、落ち着いて考えてみます。それでも足りないことに不安になる時には、今までと同じようになんらかの力が働いて必要なものは必ず自分にタイミング良く与えられるのだと、自分に言い聞かせます。

「____になればもっと自信が持てるかもしれない。___の自分でないと自分が愛されない。___でないと自分には価値がない。」という考え方にとらわれている人は意外と多いのです。ですが足りない・欠乏感はサバイバル本能のデフォルトなので、これにスイッチが入っている間は、自発的にオフに切り替えようとしない限りは、永遠に自分の不完全さに悩まされることになります。


 
足りない・不十分な自分だから何かを追加しようとするのではなくて、自分の心が弾むことや、意味があると思えることを、これからの自分の魂の財産として加えていこうとする思考に切り替えるようにします。

足りない・欠乏感を感じたらその都度それに気がついて、そうじゃないよと自分に言い聞かせる地道な作業。これが自分でなかなかできないと感じている人は、心のワークの専門家の力を借りて取り組んでみることをお勧めします。


 

自分を変えると環境が変わる


 

足りない思考をトランスフォームさせる試みを通して、あらためて、自分の内面を変えることをやってみると、次第に自分に起きることや自分を取り囲む環境が変わってくるのだと、この短い期間でも分かる瞬間が、私自身にもセラピストの友人たちにも何度もありました。大袈裟にいうと、真面目に取り組めが取り組むほど、世界がちょっとだけ違って見えるようにもなっていきます。

他にも、やろうと思っていたなどの方向性が変わってきたり、時間の使い方が変化したりなど、自分にとって意味のある選択ができるようになるようです。


 

もしもこうやって一人一人の足りない思考が減ってゆくと、そのうち世の中レベルでも物事の仕組みやある方が、変わってゆくことになるのでしょう。そんな大きな変化も決して理想ではなくて、これからの時代には、わりと速いスピードで起きていくような気がします。


 

でもまずは、自分から。

足りない思考をやめてみる実験、ぜひ試してみてください。


 


 
#心コラム