top of page

お茶の話 *里山の暮らし*

静岡県で「里山の暮らし」を営む庄子妙絵さん。ご主人「たっちゃん」やご近所さんたちとの日々の出来事をときどきコラムに綴ってくれています。今回は静岡県ならではのお茶の話です。


4月後半、近所の茶畑は萌黄色の新芽が風に揺れキラキラと輝いている。

そろそろお茶農家さん達もお茶刈りを始める頃かしら?


私は静岡に来るまで茶畑というものを見たことがなかった。静岡に来るまでちゃんと「お茶」というものを知らなかったと思う。今では、この萌黄色のキラキラした新茶の茶畑は満開の桜に匹敵するほど美しく、静岡ならではの光景だと思っている。今回は、私が知った「お茶」についてのお話です。


お茶について初心者の私に、知り合いの茶農家さんは教えてくれた。

「お茶の木は椿ファミリーの木なんだよ。紅茶も緑茶も烏龍茶だって同じ椿ファミリーの木なんだよ。」




「おいしいお茶を作りたければ、新芽の一番柔らかいところ、一芯二葉を摘むんだよ。」


一芯二葉とは、先端のまだ葉が開いていない芽の状態の「芯」と、そこから下へと互い違いに付いている葉のこと。



私の住む近辺、今年は4月末にも新茶刈りが始まったよう。


お茶刈りは平地のお茶から始まる。牧之原大地のような広大な平地のお茶は太陽をいっぱいに浴びお茶の葉も厚く育つ。お茶の葉が厚くなるので長めに蒸すため、深く蒸すお茶、「深蒸し茶」と言う。



私の住む所から30分ほど山のほうに行くと川根という山のお茶の産地がある。山の茶園は標高が高く、近くに大井川が流れていて霧も降りてくるような場所にある。平地ほど直射日光を受けないため、茶葉も平地ほど厚くならない。よって、茶葉の蒸し時間は短めになるので、浅く蒸すお茶、「浅蒸し茶」と言う。



「深蒸し茶」も「浅蒸し茶」も実際いれてみると見た目も、味も全然違う。


どのお茶も美味しいお茶には、個性がちゃんとある。

しっかりとした旨味やコクがあり、味わい深いモノ。

フルーティーな鼻に抜ける香りがすっきり爽やかなお味のモノ。

苦味と旨味のバランスが絶妙なモノ。


様々なお茶を味わう度に、びっくりさせられたり感動させられたり、

今までの私が知る「お茶」と言うものを根底から覆された。




お茶の木にもたくさんの品種があり、品種によっても味は違うし、育てる人、育つ場所、育て方によっても味は違ってくる。


美味しい山のお茶、浅蒸し茶を初めて飲んだ時、こんなにも繊細な味のお茶飲んだ事がない!と驚いた。


美味しい平地のお茶、深蒸し茶を飲んだ時、深蒸し茶にも旨味がたっぷりあって、一緒に飲んでいた姉と目を見合わせて驚いた。


玉露を初めて飲んだ時、濃ゆい旨味にまるでお出汁のよう!とこれまた驚いた。

その他にも、かぶせ茶や釜炒り茶など様々な製法で作られるお茶があるということを味わいながら知った。




色んな個性のお茶との出会いとそれらのお茶を丹生込めて作るお茶の匠達、どこまでも奥深いお茶の世界に、気がついたらすっかりお茶の虜になってしまった。


静岡県は県のほぼ全域でお茶が育てられていて、私はあらゆる産地や品種のお茶、それぞれにこだわりを持った方々に丹誠込め作られる個性豊かなお茶をたくさん飲みたいと思っている。




我が家の裏山にも私たちの前に住んでいた家主が、代々栽培していた茶畑がある。ジャングル状態になってしまっていた茶畑をたっちゃんが少しずつ刈ってくれた。まだまだワイルドな状態の茶畑ではあるが、毎年可愛らしい新芽が出てくる。


引っ越してきて間もない時、ご近所さんにお茶の葉を、「天ぷらで食べてみるさ。」と言われ食べてみた。

程よい苦味とお茶の風味が良いお味の天ぷらだった。となると、この茶葉を加工したらどんな味なのだろうと気になってくる。いろいろ調べて試して、紅茶の加工がやりやすそうだと分かった。


そうして、初めて紅茶に加工をしてみたら、いわゆる「和紅茶」の味がしてなんだか感動!自分で手摘みして、加工して、ちゃんと和紅茶の味がしたことに感動したのである。それ以来、このお茶で遊ぶ時期は、柔らかい新芽を摘み、そして加工し、「どれどれ、今年のお茶はどんなお味かな?」なんて一丁前に茶農家さん気分でたっちゃんを巻き込んで味わっている^^。





茶道の心得である「一期一会」と言う言葉。


その機会は二度とはない、一生に一度の出会いであるからこそ亭主、客ともにその茶席に誠意を尽くすという心構え。


そこでの時間は一生に一度しか共有出来ない時間であり、その人たちと過ごすその一瞬はかけがえのないものになる。だからこそ、その一瞬に想いが込められる。


私が「お茶」を知って以来、お茶を通して紡がれてきた出会いや様々な体験を思うとこの茶道の心得である「一期一会」という言葉が連想される。


飲んできたお茶には、作り手の丹生込めて作った想いやこだわり、パッションが感じられ、その想いは飲む側に伝わり、このお茶を丁寧に煎れてじっくり味わいたいという想いを生む。


そうして丁寧にお茶を煎れ、家族や友人とそのお茶についてあ〜だこ〜だ語りながらお茶をゆっくりじっくり味わう時間は私にとってはかけがえのない、なかなか素敵な「ティータイム」なひとときとなる。


お茶という奥深〜い世界に、この先も紡がれていく新たな人やお茶との出会いにワクワクしつつ、そのうち、宇治や八女の方にもお茶を味わいに行きたいな〜〜とも思っているのです。🌱



※妙絵さんの「里山の暮らし」コラムがよかったなと思われた方は、右下のハートマークをクリックしていただけると嬉しいです。


bottom of page