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生きるぼくら *里山の暮らし*

静岡県で「里山の暮らし」を営む庄子妙絵さん。ご主人「たっちゃん」やご近所さんたちとの日々の出来事をときどきコラムに綴ってくれています。今回は、読書家の妙絵さんの最近のおすすめの1冊、「生きるぼくら (浜田マハ著)」についての本コラムです。


実家に帰った時、「この本読むといいよ。」っと、ふと父から一冊の本を勧められた。


「生きるぼくら」浜田マハ著書


どんな本かというと、、、


24才の麻生人生は、学校でいじめを受けて以来引きこもっている。女手一つで育ててくれた母はある日、書置きと数枚の年賀状を置いてアパートから出て行ってしまう。その年賀状の中に、長い間会っていない長野の祖母からの年賀状があった。人生は、思いたってばあちゃんを訪ねることに。再会したマーサばあちゃんのそばには、謎の同居人。長野の田舎での新しい暮らし、そこで出会う人々、初めて経験する昔ながらの米作り。壮大な八ヶ岳と緑豊かな茅野で暮らす日々の中で、人生の心は少しずつ変わっていく。


主人公の人生にとっての「米」とはコンビニのおにぎりでしかなく、「食べること」とは、味気ないコンビニのおにぎりを機械的に流し込むということだった。


物語の前半の人生は、後ろ向きで弱く、壊れてしまいそう。


マーサばあちゃんはある日人生に、「ばあちゃんの田んぼとお米の一生の話」をする。


お米の一生は、人の一生に似ているのよ。


一粒の籾・もみが、苗になり、穂が伸び、お米がみのる。

一粒の籾から四千粒のお米が実るのよ。


ばあちゃんの「自然の田んぼ」は、昔々のやり方、耕さない、肥料を与えない、農薬をまかない。でも、手間は一般的なコメ作りの倍かかる。


米作りに挑戦する人生に集落の人々は言葉をかける。


近所の志乃さん:


マーサさんの田んぼは、耕さないし農薬も使わないから、ミミズやかえるや源五郎とか、生き物がたくさん生息しているの。ちゃーんと食物連鎖が起こって、命のリサイクルがあってね。みんなで手を結び合って生きている感じが、いっそうするのよ。


仕事先の田端さん:


お米は生きている証。

自然と、命と自分たちと。みんなひっくるめて、生きている僕ら。そんな気分になるんだ。


そしてマーサばあちゃんの言葉:


お米の生きる力、生きることをやめない力を信じてあげるのよ。四季を通してお米に付き合い、成長を助け、見守る。お米の力を信じること、すなわち自然の力を信じること。文明の利器はできるだけ使わずに、お米に付き合う。使うのは、人の手だけにして、なぜなら、人の手は、生き物の手。人の力は、自然の力の一部なのだから。

自然のまんま、そのまんま。頑張らなくても、みんな一緒に生きているのよ。

私たち、繋がりあって生きているのよ。


もちろんこの本のストーリーは素晴らしく、本の中の人間ドラマにも引き込まれたわけだけれども、読んでいく中で、共感する感覚みたいなものがあった。


私自身が小さな里山に暮らし、畑や裏山と共存する暮らしをする中で、マーサばあちゃんの、


「人の手は、生き物の手。人の力は、自然の力の一部。みんな一緒に繋がりあって生きている。」


という言葉がじんわりと心に響いた。私は、裏山に入る時のことを思い出した。



山を歩く足の裏の柔らかい土の感触、林のにおい、優しくほおに触れる風、響く鳥の鳴き声、葉っぱ同士が触れる音、私の五感がそれらをフルに感じている。


同時に自分という人間も生き物であり、この自然のサイクルの一部なんだな〜という感覚が沸く。それは街に住んでいた頃は、湧いたことのない感覚。この自然の流れの一部に身を任せることが、自然なナチュラルなことであり、そう思うといろんなことをLet Go(手放す)することが出来、流れに身を任せればいいのさ〜という気持ちになる。それは時に、モヤモヤしていた不安や心配が解けたり、今一度大事なことを思い出させてくれたり、自分のブレそうになっていた軸を戻してくれるようなそんな感覚でもある。


もう一つ、本の中で素敵だな〜と感じた言葉、、、


たまにしか出てこない田端さんが、本当にいい事を言う〜。


おにぎりって、実にいい形をしているって思わない?

どうしってって、人の手で結ばれた形をしているからだよ。

二つの手と手を合わせ、ほっこりと握る。

これを食べる人が健康でいられますようにっていう作った人の祈りのかたち。


本当にそうだな〜。おにぎりは、作っている人の想いの形そのままなんだ。素敵だな〜と。


コンビニおにぎりに温もりや温度が感じられないのはマシーンメイドだからなんだろうな〜と。


豊かな自然、素朴な暮らし、温かい人々が主人公の麻生人生くんにどのように影響していくのかが読みどころ。人生くんにかけられる周りからの言葉は、彼の心をくすぐり、響き、彼の心の温度を徐々に上げていく。


読み進めていく中で私自身にもほっこり温かい感動を与えてくれ、心に響く言葉もたくさん詰まった素晴らしい一冊でした。


本の中に出てきた場所、御射鹿池(みしゃか池)行ってみたいな〜。東山魁夷の御射鹿池の絵、「緑響くEchoes to the green」も見てみたいな〜〜とも思いました。




父が言うには、決して電車の中で読まないように!泣いちゃうんで!っと言っていた。

同感です😭。




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