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ショックを癒す 

思いがけず事故にあった際に受けた心のショックについて考えてみました。

 

少し前のことになりますが、友人から衝突事故にあった話しを聞きました。赤信号で停車していた際に突然、後ろからやってきた車にぶつけられたとのこと。運転手はどうやら前を見ていなかったようで、時速約25kmのスピードでぶつかってきたそうです。友人の車はぶつけられた衝撃で前方の車に衝突。玉突き事故となりました。(このポストは友人の許可を得て掲載しています)


幸い、事故の翌日すぐにカイロプラクターに駆け込んだ友人は、ムチウチなどの症状が出ることはなく一安心。でも、事故から1週間が過ぎた頃、眠れない、夜中に目が覚めてしまうなどの症状が出始めたそうです。さらに日中には急に悲しくなって涙が出てくる、イライラするなどの精神的な不安定さを感じることがあるとのこと。それが子供と遊んでいる時や、運転している時などに突然にやってくるので戸惑っているのだと、事故から約3週間を経過した頃に相談を受けました。今回のように精神的に不安定になることは滅多に起きないので、あの衝突事故がキッカケなのではと思い始めているということです。


彼女が思う通り、私も彼女の精神的な不安定さは衝突事故がキッカケになっていると感じました。交通事故のような不運な出来事に遭遇すると、私たちはまずは身体のこと、車のこと、そして保険諸々に関する対応に一番最初に取り掛かりますが、心のケアについては後回し、もしくは全く無視してしまいます。とくに今回のように、身体が目に見える傷を負っていない場合だと、「大事に至らずによかったね。」といった感じで普段の生活へと戻ってゆくのはよくあることだと思います。


でも、その時に体験した心のショックや驚きは心の衝撃となって意識と身体の中に残ります。通常は時間とともに少しずつ癒されてゆきますが、場合によっては長い月日を経ても癒されずに残ってしまうことがあります。時には、別の心の傷と絡みあって余計にひどくなることもあります。PTSD(心的外傷後ストレス障害)となり、心理療法士や精神科医による専門的な助けが必要になることもあります。


心の傷は目には見えません。そして私たちは目には見えないものを軽視してしまいがちです。でも、本当は身体でも心でも、そこにあるショックのエネルギーを感じているはず。


偶然ですが、私も5ヶ月前にこの友人とほとんど同じような衝突事故に遭いました。玉突き衝突で、私は友人と同じく、真ん中の車両だったのですが、幸い身体にも心にも大きな支障がありませんでした。この時期の私はとても忙しく、先々のスケジュールを考えて「今ここで心が折れては後が大変!」という不安があったことが原動力となり、普段以上に心のケアに気を使ったのが功を成したようです。5ヶ月前の事故直後に私が行った心のケアはこんな感じです。


まず、その日は事故のショックで気持ちが動揺していましたので、夕食の後は一人で静かに過ごすことにしました。そして身体と心を癒す目的で、普段よりもゆっくりとお風呂に浸かりました。キャンドルを焚いてバスソルトを入れて音楽をかけてお湯に浸かっていたところ、心が解放されたのか思いがけず涙がたくさん出てきました。現場では冷静に対応していた自分でしたが、ぶつけられた衝撃の直後には両手が震えていましたから、本当はとても怖かったのでしょう。1時間ほどゆっくりとお風呂に浸かって体を温め、涙を流して自分を癒す作業をしたら、少し気持ちが軽くなってゆくのを感じました。そしてお風呂の後は早めに寝室へ。毎晩眠る前に短いメディテーションをするのですが、その夜はメディテーション中にふたたび涙が出てきました。


そして翌日はマッサージを受けにゆき、数日後には鍼治療を受けました。目的は受けた衝撃で乱れたであろう「気」が滞らないようにすること。マッサージと鍼治療を何度か受けて2週間ほど経過した時点で、事故の衝撃で受けた心の傷が8割ほど癒されてきたように感じました。


その後、信号待ちをしているときに、「後ろからまたぶつけられたらどうしよう」という恐怖心がよぎることもありましたが、落ち着いて呼吸をし「大丈夫だと信じる」ように心がけました。恐怖心や悲しみ、不安定な気持ちがやってくるとその都度丁寧に、自分をなだめて癒しが進むように心がけました。こんな感じで、「心と身体を癒すことを意識する」というシンプルな方法だったのですが、自分にはとても効果があったようです。


友人はその後、心が受けた衝撃と傷を癒す作業に取り掛かりました。私もお手伝いとしてヒプノセラピーのセッションをさせてもらいました。本人はとにかく自分に優しくするように心がけたそうです。不眠や不安定な状態が続くようだったら専門家のところに通うようにすすめましたが、事故から約2ヶ月経った現在では調子が戻ってきているとのことです。


今回のように思いがけず事故に遭遇すると、「なんで自分がこんな目にあうんだろう?」とか、「最近の自分の行いが悪かったのだろうか?」という考えが頭をよぎることがあります。友人とも、「この経験に意味があるとしたらなんだろうね?」という話になりました。私は5ヶ月経過した現在、当初よりも冷静に「もし意味があるとしたら」について考えることができるようになっているのを感じます。まず、時間はやはり何よりも強力な癒しになり得るのだということを感じていますが、それ以外にも今回は自分が心のケアに対して普段以上に丁寧に向き合えたことで、学びと発見がありました。また、日常のスピードを少し緩めるきっかけになったことも間違いなく意味のあることでした。


心が受けたショックを癒すケアは、何も交通事故のアフターケアに限らず、日常で起きるさまざまな出来事に必要だと感じます。たとえば恋愛関係が終了したとか、仕事を失ったとか、大切な人に心を傷つけられた、仕事や学校での思いがけない失敗などの体験にも当てはまります。私たちはよく、「平気なふり」や「大げさにしないための努力」をすることがありますが、それは心のケアにおいては逆効果です。自分が衝撃を受けたことや傷ついたことを認めることは、決して自分の弱さを認めることではなく、自分が人間だということを思い出すことなのだと思います。私たちはマシーンやAIではないということ・・・。心のケアに意識を向けると、人間体験がもっと豊かになってゆくのだと感じています。



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